やがて春が来るまでの、僕らの話。






<倉田side>



「あ、律くんおっはよー!」


待ち合わせ場所の空港のロビーで、恥ずかしげもなく大声を出す男が俺を呼ぶ。


「おま、うるさいわ!」

「うひゃひゃ、ごめんごめん」


そんな杉内の隣には、半分寝てんじゃないかってくらいに目が開いてない男が一人。


「この人起きてんの?」

「わかんね。合流してからずっとこんなんだよ」

「おーい、南波くーん」

「……」

「だめだ寝てる」



“陽菜の命日、みんなで帰ろう”


カッシーから届いたそのメッセージが、杉内と南波くんにも送信されたのか、それはわからない。

だけど合流場所を決めたとき、そこにはなぜか二人の名前もあった。

いや、厳密に言うと二人だけじゃなくて……



「やーーん、おっはよ~~う」

「おはー。ねぇちょっと聞いてよ、今駐車場で車擦っちゃってさー」

「うひゃひゃ、俺なんてこの前実家のポストに激突したよ」


むっちはともかく、俺らの地元になんの縁もない三人が、当たり前のようにいる。

みっちゃんの服装がいつもより少し落ち着いてるのは、今日が陽菜の命日だから、かな。


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