やがて春が来るまでの、僕らの話。



「ねぇ、向こうってまだ雪積もってるんでしょ?」

「積もってるどころの騒ぎじゃないよ。この時期だと雪しかないから」


杉内のカラっとした声に、むっちが溜め息ながらに答えてる。


「俺山盛りの雪見んの初めて!」

「そんな楽しいものじゃないんだって」

「あ、あと有名なラーメン屋さんあるんでしょ?ネットで調べたら書いてた。今日みんなで行こうよ」


お前何しに行くんだよって、すかさず突っ込みかけたとき。


「ラーメン、あんのか…」

「あら、南波くんが起きたわ~」

「味噌ラーメンが有名らしいよ」

「味噌!?食うしかねーな!」

「お、みっちゃんも味噌派か」

「てか急にガラ悪くね?」

「うひゃひゃ、確かに」

「……」



三人がいてくれて、よかったのかもしれない。

きっと俺たちだけだったら、陽菜のことばかりでこんな風には笑えなかったから。


あの町に行くことを、少しでも楽しみに思ってくれる人間がいて、よかった。


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