やがて春が来るまでの、僕らの話。



それから一時間後、特大雪だるまは完成した。

意外に力がいる雪だるま作りに、体は少しポカポカしている。


「わーい、写真撮っとこー」


陽菜がポケットからスマホを取り出し、アングルを変えて何枚も写真を撮っている。

そんな楽しそうな光景に、雪だるまも嬉しそうに笑っている気がした。



「そういえばハナエとひで、二人で初詣行ったんでしょ?」



えっ…


撮影に満足したのか、スマホをポケットにしまいながら陽菜の笑顔が私に向いた。


「な、なんで知ってるの?」


誰かに見られてた?

それで噂になってる?


「ひでが教えてくれたんだよ。三人で行く予定だったけど、志月くん体調不良だから二人で行ってくるわーって」

「え、体調不良だったの?」


心配する倉田先輩の声に、若瀬くんは「ただの食べ過ぎ」って笑って答えた。


「どんだけ食ったんだよ」

「あはは、志月くんが珍しいよね」

「……」



賑やかなみんなの輪の中で、きっと私だけが笑えていない。


そっか、そうだよね。

陽菜に内緒にして、二人で出掛けるわけないよね。

ちゃんと報告して、変な心配をかけないようにして。


そうだよ、当たり前だよ。


柏木くんが一番に考えるのは、それは当たり前に陽菜のこと。

付き合ってるんだもん、当前だよ……


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