やがて春が来るまでの、僕らの話。



「ね、おみくじ引いた?私おばあちゃん家の近くにある神社で引いたんだけど、末吉だった」

「うわ、微妙~」

「ひでは引かなかったの?」

「あー、忘れてた」

「それこそ定番じゃん」

「うん、忘れてた」


おみくじ……

あの日は柏木くんと喧嘩になって、ちゃんと初詣できなかったから。



「……大吉がいいなぁ」



どうせ引くなら大吉がほしい。

それでこの複雑な気持ちも、神様にどうにかしてほしいな。


「大吉って。クハハ、どんだけ欲張りだよ」

「、…」



柏木くんが私に向かって笑うと、胸の奥がきゅうっと締め付けられるように痛かった。

誰にも聞こえない小さな溜め息で、その痛みをやり過ごす。



「あーもう、手袋に雪が沁みて冷たい」

「なに陽菜、防水になってないやつ?」

「うん、間違えちゃった」

「バカだねー、雪だるま作るってのに」


呆れたように言った柏木くんは、自分の手袋を脱いで陽菜に渡した。

それを受け取った陽菜は、すぐに手に嵌めている。


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