やがて春が来るまでの、僕らの話。



「あったかーい。でもおっきい」

「文句言うなら返せ」

「やーだねー」


やり過ごしたはずなのに……仲の良さそうな二人を見ているのが、さっきより辛い。


このたった数秒で、まるで自分の気持ちが膨らんでいるみたいで……


こんなに仲が良くて、こんなにお似合いで、こんなに幸せそうな二人がいるのに。


膨らみ続ける私の想いは、一体どこに閉じ込めればいいんだろう……










「具合でも悪い?」

「え?」


若瀬くんに送ってもらっている帰り道。

ぼーっと歩いている私の顔を、若瀬くんが覗き込んできた。


「元気だよ」

「そう?」

「うん」

「……」

「ほんとだってば!」

「なんも言ってねぇよ」


焦って元気アピールをしたけど、どうにも疑われている気がする。


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