やがて春が来るまでの、僕らの話。
略奪。陽菜から柏木くんを、奪い取る?
「そんなの出来るわけない……」
陽菜は大切な友達だし、奪うとかそんなのありえない。
「じゃあ諦めるんだ?」
「……」
「まぁそれが一番いいよね」
気づいたばかりなのに、もう諦めなきゃいけないなんて…
でもそうだよ、他の道なんてない。
二人の幸せを壊す気がないなら、諦めるしか選択肢はない。
「私、諦める」
「簡単に言ってるけど、それ、ほんとにできるの?」
「……」
「あの二人がこんなに傍にいて、一人で簡単に忘れられると思ってる?」
なんか、若瀬くんの言い方がむかつく。
私だってまだ気持ちに気づいたばっかりで、うまく整理もできてないのに。
なのにそんないじわるな言い方、
「じゃあさ、俺と付き合えばいいんじゃない?」
隣を歩く若瀬くんの声に、あの日のように足が止まった。