やがて春が来るまでの、僕らの話。


「あー、なんか負のオーラ背負ってるよねー」

「私まだ声とか聞いたことないんだけど」

「でもさっき倉田先輩と話してるの見たよ」

「は?まじで?」

「しかもそのあと若瀬くんに話しかけてたっぽい」

「はー?なにそれ、イケメンとは話しますって感じ?」

「大丈夫だって、どうせ相手されないから」

「あはは、確かにー。影薄いしねー」



教室の中から聞こえる声は、きっと私が聞いてはいけないもの。

こんなものを聞いてしまった以上、どうしたって胸は痛くなる。


なんか……もう、


「忘れもの?」

「……!」


横から聞こえた声に、心臓が跳ねた。

見上げた隣に立っていたのは、さっきゲーム機を預かってくれた男子生徒だ。


え、いつからいた……?


「なんか忘れたの?」

「スマホ、机の中に置いてきちゃって」

「ちょっと待ってて、取ってくるから」


ガラガラっとドアを開け、男子生徒はすぐそこにある私の机を漁ってくれる。

私は女子たちに見つかりたくなくて、体を隠す様に壁に寄った。


「あ、若瀬くーん、帰るのー?ばいばーい」


さっきの女子たちの声が聞こえる。

やだな、胸が痛い。


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