やがて春が来るまでの、僕らの話。



あれ以来普通だったから、私もあえて普通にしていたけど……



「俺が前に言ったこと、ちゃんと覚えてる?」

「、…」



───“……一目惚れならぬ、笑顔惚れ?”



あのときと同じ空気を感じて、どうしていいのかわからなくて、また逃げようかなって考える。

でもさすがに二回目は人としてダメな気がして、一端は思い留まるけど……


だけど若瀬くんが、真剣な目でこっちを見ているから。

やっぱり耐えられなくて、逃げようと足を踏み出したとき──


ガシッ


「え…」


私の腕を、若瀬くんがガシっと掴んだ。



「ダメ、逃がさない」

「、、、」



真剣に見つめられて、逃げ場もなくて。

十五歳の私には、こんな状況どうしていいのかわからなすぎる。


私一体、どうすればいいの?



「あの…」

「好きだよ」

「、…」



恥ずかしくて、若瀬くんの顔を見れない……



「あのときより、もっと。本気でハナエのことが好き」



顔、上げられない……



「だから俺と、付き合って」

「っ…」



ドキドキが、口から飛び出してしまいそう。


心臓が、今この瞬間に壊れてしまいそう……


< 60 / 566 >

この作品をシェア

pagetop