やがて春が来るまでの、僕らの話。
「カッシーのこと忘れるの、手伝うから。二人でなら忘れられる、保証する」
緊張で、手と足が震えてて……
顔だってきっと、すごく真っ赤になっている。
「付き合ってくれる?俺と」
「でも」
「返事、うんって言うまで離さないよ、この手」
強引すぎるその言葉を、うまく断る術なんて私にはない。
ドクドクと鳴る心臓の音が若瀬くんにも聞こえてしまいそうで、それが恥ずかしくて……
とにかくこの場から早く逃げ出したかった。
「わ、わかったからっ、手離して」
「わかったの?」
「わかった」
「そ。じゃあこれからよろしくね」
手が離れた瞬間、私は逃げるように走り出した。
恥ずかしくて緊張して、頭の中が雪みたいに真っ白になって……
十五歳の冬休み。
真っ直ぐに気持ちをぶつけてくれた彼の想いに、私はどれだけ応えることができていたかな。
彼の優しさにどれだけ助けられていたか、今ならこんなにもわかるのに。
若瀬くんの優しさがあったから、私は住み慣れない小さな町で、笑っていられたよ。
突然姿を消した私のことを、ひどい奴って思ってる?
それでもいい。
それでもいいから、
本当はもう一度、会いたいよ……