やがて春が来るまでの、僕らの話。
【若瀬side】
「眠ぃ…」
三学期が始まった。
久しぶりの制服に腕を通すと、少し窮屈に感じる。
背、伸びたかな?って、そんなことを考えながら玄関のドアを開けたら…
ブォォオ……!!
「うわ、すげー風…」
外は嫌気がさすほど荒れていて、雪と風で最悪だ。
こんな天気の日に新学期が始まるとか、憂鬱極まりない。
まぁ学校近いし、いいんだけどね。
なんて前向きに考えてみたけど、やっぱり憂鬱。
ブォォォォオオ!!!
「んだよこの風!!」
最悪だ。
まじで最悪すぎる。
「志月ー!」
暴風雪の中、後ろから声が聞こえ振り向くと、白い視界の中から律くんが走ってきた。
「おはよ、すごいなこの天気」
「最悪だよね」
男二人風の中を突き進み、どうにか見えてきた学校を目指す。
見えているのになかなか着かないのは、よりにもよって向かい風だから。
「あ、倉田先輩、おはようござ、」
聞こえた声に振り向くと、声の主のハナエが俺を見て固まった。
こいつ今、雪で視界が悪くて律くんしか見えてなかったな。
あの日以来会ってないから気まずい顔されんのも仕方ないけど、顔、引きつりすぎだろ。