やがて春が来るまでの、僕らの話。
「飛ばされてたよ、思いっきり」
「クハハ、やっぱり?」
「志月くんに助けてもらったんだ?」
「うん、助けていただきました」
「あはは、超かしこまってる~」
冬休み明けで賑わう教室の中は、外とは違って暖房のお陰で暖かい。
外との温度差で皮膚がジンジン痛み出す。
「ひで、ジュース買いに行こ~」
「はー? 一人で行けよ」
「……一緒に行こうよ」
「あー……、わーったって。ほら行くよ」
陽菜からの“とある”空気を悟ってか、カッシーがすかさず歩き出す。
打って変わって表情を変えた陽菜は、浮かれた顔で鞄から財布を取り出した。
「あ、陽菜のお財布」
「そう、これ前に雑誌に載ってたやつ」
「買ってもらえたんだ?」
「うん、ひでからのクリスマスのプレゼント!」
「そっか、よかったね」
陽菜の満点の笑顔とは対照的に、ハナエの笑顔は30点。
だからそんなんじゃバレるぞって。
「陽菜、行くよ」
「はーい」
カッシーたちが教室を出る寸前、俺は二人を呼び止めた。
「ねぇ」
足を止めた二人は同じタイミングで振り向いて、それと同時に冬休み中にパーマをかけたっぽい陽菜の髪がふわっと揺れた。
「なに?」
「俺、彼女できた」
言った瞬間、カッシーと陽菜の目は同じように丸くなる。