やがて春が来るまでの、僕らの話。
「え、」
「うっそー!誰、なに、誰!?」
そんなに興味があるのかってくらい食いついてきた陽菜と、それにかき消されたカッシーの声。
俺は隣にいるハナエの肩をこちらにクイっと引き寄せて、改めて言う。
「彼女、こいつ」
「え……」
「は?」
「ええええー!?」
陽菜が叫ぶ声の中、隣から焦り混じりの視線を感じる。
「ちょっと、若瀬くんっ」
「お前が言ったんだろ、わかったって」
「あれはっ!」
───“返事、うんって言うまで離さないよ、この手”
───“わ、わかったからっ、手離して”
「そういうことだから」
ドアのとこに立っている二人に知らせると、返事をくれたのはカッシーだ。
「そ、よかったじゃん」
「、…」
動揺一つ見せないカッシーにグサっときたのか、力んでいたハナエの肩の力が抜けていく。
「もー!後でゆっくり聞かせてね」