やがて春が来るまでの、僕らの話。
席替えから数日後。
気のせいかもしれない。気のせいなのかもしれないけど。
いや、やっぱり気のせいじゃない。
どう見てもこれ、気のせいじゃないでしょ……
「ハナエおっはよーん」
「…!」
玄関で後ろから現れた陽菜に、靴箱の扉を焦って閉めた。
中を見られたくなくて、陽菜がビックリするくらいの勢いで、バンッと。
「どうしたの?靴、履かないの?」
「いいの」
「え、いいのって、」
「靴忘れたから、スリッパ取ってくる!」
「えっ」
何をどうしたら靴を忘れんだって突っ込まれるのは当然だから、言われる前にスリッパを取りに立ち去った。
あの日、席替えをした日の二時間目。
若瀬くんと授業をサボった時から、何かがおかしい。
一昨日は知らないアドレスから「ブス」「死ね」「学校来んな」ってメールが何通も届いた。
昨日は机の上に、「あんたと志月くんは不釣り合い、消えろ。」って書かれたメモが置いてあった。
そして今日は、下駄箱の中の靴が泥水でドロドロにされていた。
あからさま過ぎる嫌がらせだけど、胸を痛めないような強さを私は持ち合わせていない。
どうしよう、こんなの若瀬くんには言えないし。
どうしよう……