やがて春が来るまでの、僕らの話。
三時間目の休み時間。
次は音楽の授業だから、陽菜と二人で音楽室に向かう。
「今日リコーダーのテストだねー」
「ねー、……あ!」
「ん?」
「リコーダー教室に忘れちゃった…」
「ええ!」
「ごめん、取ってくるから先行ってて」
「うん、早くねー」
忘れものに気づいたのは、授業が始まる三分前。
割と離れている教室までスリッパで取りに走るのは、意外としんどいし時間がかかる。
でも今日の授業リコーダーのテストだし、仕方ないから走るしかない。
パタパタパタパタ、
ドン!
走る廊下の角で、誰かと思い切りぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさいっ」
「いや、こっちこそ、……あれ、ハナエちゃん」
「倉田先輩!」
ぶつかったのは、倉田先輩だった。
「ごめんね、大丈夫?」
「大丈夫です、こちらこそスミマセン、急いでて」
「いや、俺もちゃんと前見てなくて」
「あ、じゃああの、急いでいるので失礼します」
先輩に深く頭を下げて、走りにくい音を響かせ廊下を再び駆けていく。
パタパタパタパタ…
「……なんでスリッパ?」