やがて春が来るまでの、僕らの話。



やっと教室に着いて、ドアを開ける。

誰もいないと思っていた教室内には四人の女子がいて、入ってきた私を一斉に見た。


その瞬間感じたのは、嫌な空気だった。

まるで今さっきまで私の悪口でも言っていたような、そんな空気。

だからかな、物凄く気まずさを感じてしまう。


早くリコーダーを持って音楽室に行こう。


そう思ったのに。



「ねぇ」



聞こえた女子の声に、机の前で顔を上げた。

まさか話しかけられるなんて思っていなくて、驚いて。

教卓前に集まっている四人の視線が、私に集中している。


「谷さん、志月くんと付き合ってるってほんと?」


若瀬くんと二人でサボったあの日から、いつの間にか噂は広まっていた。


付き合ってる。

そう答えたら、この場はどうなるんだろう……


「もし本当ならさ、言っちゃ悪いけど全っ然似合わないよ?」


そう言ってきたのは、クラスでもよく目立っている化粧の濃いリーダー的存在の女子。

机の上に座って足を組んでいて、離れた場所からでも私を見下してくる。


「自分で気づかないかな。不釣り合いもいいとこだって」


なにこれ。

もしかして、この人たちが嫌がらせの犯人?


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