やがて春が来るまでの、僕らの話。
「なに、あいつ早退したの?」
話の内容を聞いていたのか、いつの間にか傍にいたカッシーも会話に加わる。
だけどカッシーはあんまり興味がなさそうで、ストローを刺してココアを飲みだした。
「あれ、陽菜は?」
「トイレ」
右手には音楽の教科書とリコーダー、左手にはココア。
そんなカッシーの姿は、どっちかというと女子高生みたいだ。
「んで、泣いてたってなに、どういうこと?」
「いや、俺が教室行ったらさ、ハナエちゃん座りこんで一人で泣いてて」
「……」
「さっきまで一緒だったんだけど、授業が終わる少し前になったら急に早退しますって」
俺の言葉に顔を曇らせる志月と、やっぱり興味なさそうなカッシー。
「電話してみたら?」
「うん」
言われてすぐポケットからスマホを取り出し、志月は慣れた手つきで親指をスライドさせていく。
耳に移動したスマホだけど、一向に繋がらないのか志月の様子は変わらない。