やがて春が来るまでの、僕らの話。



「なに、あいつ早退したの?」


話の内容を聞いていたのか、いつの間にか傍にいたカッシーも会話に加わる。

だけどカッシーはあんまり興味がなさそうで、ストローを刺してココアを飲みだした。


「あれ、陽菜は?」

「トイレ」


右手には音楽の教科書とリコーダー、左手にはココア。

そんなカッシーの姿は、どっちかというと女子高生みたいだ。


「んで、泣いてたってなに、どういうこと?」

「いや、俺が教室行ったらさ、ハナエちゃん座りこんで一人で泣いてて」

「……」

「さっきまで一緒だったんだけど、授業が終わる少し前になったら急に早退しますって」


俺の言葉に顔を曇らせる志月と、やっぱり興味なさそうなカッシー。


「電話してみたら?」

「うん」


言われてすぐポケットからスマホを取り出し、志月は慣れた手つきで親指をスライドさせていく。

耳に移動したスマホだけど、一向に繋がらないのか志月の様子は変わらない。

< 90 / 566 >

この作品をシェア

pagetop