やがて春が来るまでの、僕らの話。
「出ねぇ」
少しイラっとしたようにスマホをしまう志月の横で、ココアを飲み続けるカッシーがいる。
だけどその中身が空に近付いたのか、ズズーっという歯切れの悪い音が響いた。
「ねぇ律くん、ハナエって一人で教室にいたの?」
「うん…あ、でも俺が行くとき、女子とすれ違ったわ」
「女子?」
「なんかこう、化粧が濃い感じの……三、四人だった気がする」
ココアを飲み終えたカッシーは、その紙パックをぎゅうっと潰した。
着ているグレーのカーディガンから見える手が、紙パックの形を無残な姿に変えていく。
それを見ている時だった。
「あ、いた、カッシー!」
男子生徒の声が聞こえて、俺らは三人同時に振り向いた。
カッシーたちのクラスメイトかな。
「なに?」
「なんか廊下で陽菜が女子と掴み合いの喧嘩してたぞ!」
「………は?」