やがて春が来るまでの、僕らの話。
「ハナエの悪口?」
眉間を寄せた志月くんは、俺でも関わりたくないような低い声を出している。
「志月くんとは不釣り合いとか、どうやって別れさせるかとか……あと」
「あと?」
「学校から追い出すために、父親の話を広げようとか」
「……」
陽菜の声に頭の中から音が聞こえた。
何かがキレる音。
陽菜じゃないけど、ブチって血管が切れる音。
「父親の話って?」
「よくわかんないけど……お父さんが誰かを死なせた、みたいな」
「なにそれ」
「ハナエがお父さんにわざとお酒をすすめて、すっごい飲ませて、無理矢理車運転させて、そのせいで事故に遭って死んじゃった人がいる、とかって言ってた気がする」
なんだそれ、話違いすぎんだろ。
つーか初詣の日の話、町の誰かに聞かれてたってことか。