やがて春が来るまでの、僕らの話。






「ハァ、ハァ……」



見ぃつけた。なんて可愛い声も出やしない。


息が苦しすぎて声すら出ない。


でも見つけた。


やっと見つけた。


やっと……



「大吉だった?」



正常な息もままならないうちに、おみくじを引いてる後ろ姿に声を掛けた。

ビクッと肩を揺らしたハナエが、静かに振り向く。


「……柏木くん?」


すっかり暗くなった空の下でも分かるほど、ハナエの目は赤く腫れていた。


「大吉だった?」


握るおみくじに視線を向けて、もう一度尋ねる。


「末吉と小吉と吉が二枚と……凶が一枚」

「クッ……」


どんだけ引いてんだよ!って突っ込みと同時に、凶って言葉にも吹いてしまった。

しかも結局大吉はなしって、かなり笑える。


「……ひどい、笑いやがって」

「つーか凶ってどうやったら引けんだよ」

「うるさいな、なんでいるの」


イライラしているのか、いつもより乱暴な言葉と共にハナエは俺に背を向けた。


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