獅子に戯れる兎のように
「まじで?よく留空がシンデレラだとわかったね。陽乃、ほらみなさい。全ての男が女の容姿に捕らわれてるわけじゃない。見てる人は、ちゃんと見てるんだよ」

 美空はズバズバと思ったことを口にする。

 まるで自分が意中の男性に誘われたみたいに、勝ち誇った眼差しだ。

「はいはい。留空、望月さんは意外と清楚な女性が好みだとわかったけど、メイクはヨシとして、せめて眼鏡は外しコンタクトにしてね。コンタクトにしただけで、留空は可愛くなるんだから」

 陽乃は携帯電話を置き、やっと食事を始めた。褒めているのか貶しているのか、よくわからない。

 留空と美空が一足先に席を立ち、私は陽乃と二人になる。

「世話の焼けるシンデレラだよ」

「陽乃……まさか……。あの電話……」

「留空とは友達だからね。友達の恋にちょっと手を貸した。留空と美空には内緒ね」

 陽乃はニヤリと口角を引き上げる。

 さっき携帯電話でLINEしていた相手は望月!?

 望月は本当は留空に気付かなかった。陽乃がLINEで知らせ、口裏を合わせたの?

「陽乃、留空を傷つけないでよ」

「当たり前でしょう。そんなことをしたら、私が彼を抹殺する」

 親指と人差し指でピストルの形を作り、「ばんっ」て妖艶に笑う。

 陽乃は口は悪いけど、友達のことを誰よりも気遣っている。ついていい嘘と悪い嘘。この嘘がどう転ぶかは、留空次第だな。

「柚葉はどうなの?木崎さんのこと本当に振る気?勿体ないよ」

「私は……」

「気になる人がいるの?例えば年下とか」

「……っ、そんな人いないよ」

「わかりやすいな。確かにイケメンだし爽やかな好青年に見えるけど、あの年下君は危険な香りがする」
< 104 / 216 >

この作品をシェア

pagetop