獅子に戯れる兎のように
その眼差しに、背筋がゾクッとした。
「俺の親、自分達が高学歴じゃねぇから、俺に大学行けってうっせぇんだよ。そんなに行きたけりゃ、てめぇが行けっつーの」
乱暴な口調に、思わず身を強張らせる。
「ていうか、あんたよく見たら美人だな。スタイルも悪くねぇし、どうせするなら違う勉強教えてよ」
彼はベッドから起き上がり、ニヤニヤ笑いながら私に近付いた。
「……違う勉強って?科目を変えるってことですか?まだ……可能ですけど。大学は理数系?文系?」
「じゃあ変更。保健の実技にしろ。保健の授業で性教育イマイチよくわかんなかったんだよな。ちゃんと実技指導してくんない?年上だし経験豊富なんだろう」
彼は壁にドンッと両手をつき私を挟み込み、顔をヌーッと近付けた。
「……変なことしないで」
「変なこと?男と女、ソレッて難しい方程式や化学の実験より、大事な勉強じゃね?上手いか下手かで、人生変わっちまうだろ」
「……離れなさい」
「いきなり命令口調かよ。大学生のバイトのくせに、センコー面すんな」
彼は私の腕を掴むと、いきなりベッドに押し倒した。ベッドのスプリングで体が跳ねる。
「やめて、大声で叫ぶわよ」
「叫びなよ。店は酔っ払いが騒いでっから、叫んでも聞こえねぇよ。あんた電車で俺を見てただろう。不良にやられてる俺を見て、それでもノコノコ付いて来たのは、俺に興味があったからじゃねぇの」