獅子に戯れる兎のように
『望月さんから電話があったの。赤ちゃん産んで欲しいって……。結婚して欲しいって……』

「留空……本当に?良かったね……。本当に良かったね……」

『柚葉が電話してくれなかったら、私……間違いを犯すところだった』

「私じゃないよ。ごめん、陽乃に気付かれて……。陽乃が望月さんの連絡先を教えてくれたの」

『陽乃が……私のために?』

「うん、ああ見えて陽乃は優しいとこあるから」

『陽乃が優しいことは知ってる……。挙式の日取りが決まったらまた知らせるね。柚葉、本当にありがとう』

「留空、幸せになってね。おやすみなさい」

『おやすみなさい』

 留空との電話を切り、私まで幸せな気持ちになった。

 婚活パーティーで出逢った二人が、恋に堕ち結婚する。こんな出逢いもあるんだね。

 ――翌日から、留空は連続休暇を取った。

 望月は留空の両親に逢い、正式に結婚の申し込みをし、妊娠を告げた。

 留空はおとなしい性格ゆえ、両親は交際している人がいたことも全く知らされず、妊娠という事実に愕然としたらしいが、望月の人柄を認め、結婚を快諾したらしい。

 望月のご両親も留空の妊娠を喜んでくれたらしく、話はトントン拍子で進み、留空の連続休暇中に急ぎ結納を済ませた。

 留空からは『連続休暇明けに辞表を提出し、退職することに決めた』と連絡があった。

 四人の中で一番奥手だと思っていた留空が、四人の中で一番先に結婚するとは思わなかった。

 運命の出逢い。
 いつ、どこで、人は恋に堕ちるかわからない。
< 141 / 216 >

この作品をシェア

pagetop