獅子に戯れる兎のように
【16】獅子に抱かれた夜
エレベーターに乗っているのは、木崎と私、日向と数名の男女。
木崎は何を思ったのか、突然私にこう切り出した。
「雨宮さん、まだ時間いいですか?」
「……ぇっ?」
日向は数名の男女を挟んだ前方に立っている。
数名の男女は六階で降り、エレベーターの中は三人になった。
木崎はそれを見計らうように、話を続けた。
「少し休んで帰りませんか。実は部屋を取ってあるんです。フロントで鍵をもらってくるのでロビーで待っていて下さい」
木崎の言葉に日向の表情が変わった。
「……木崎さん」
木崎の大胆な行動に、思わず言葉が詰まる。
木崎と結婚前提で交際すると決めた私。留空の婚約を知り、木崎のはやる気持ちはわかる。
でも……
日向の前で言わなくても。
エレベーターのドアが開き、私達が降りたあと、日向も後を続くように降りた。
木崎はフロントに向かい、私は木崎に恥をかかせたくなくて、少し離れた場所で待つ。
もし、日向とエレベーターで逢わなければ、私は木崎にその場で口実をつけて断っていただろう。
キスもまだしていない木崎と私。結婚は相手の人柄や経済力だけではなく、体の相性も重要だということはわかっている。
離婚原因のひとつに、性の不一致という言葉があるくらいだから……。
私には、その自信はなかった。
過去のトラウマが男女のそうした情愛を拒んでいる……。
木崎に嫌われてしまうかもしれない。それ以前に、まだ恋もしていない相手と、そんな関係になっても本当にいいのだろうかと、不安が過る。
木崎がカウンターにいる一分一秒が、とても長く感じられた。
日向が早く立ち去ってくれたら……。
そう思っていた矢先、日向に腕を掴まれた。
木崎は何を思ったのか、突然私にこう切り出した。
「雨宮さん、まだ時間いいですか?」
「……ぇっ?」
日向は数名の男女を挟んだ前方に立っている。
数名の男女は六階で降り、エレベーターの中は三人になった。
木崎はそれを見計らうように、話を続けた。
「少し休んで帰りませんか。実は部屋を取ってあるんです。フロントで鍵をもらってくるのでロビーで待っていて下さい」
木崎の言葉に日向の表情が変わった。
「……木崎さん」
木崎の大胆な行動に、思わず言葉が詰まる。
木崎と結婚前提で交際すると決めた私。留空の婚約を知り、木崎のはやる気持ちはわかる。
でも……
日向の前で言わなくても。
エレベーターのドアが開き、私達が降りたあと、日向も後を続くように降りた。
木崎はフロントに向かい、私は木崎に恥をかかせたくなくて、少し離れた場所で待つ。
もし、日向とエレベーターで逢わなければ、私は木崎にその場で口実をつけて断っていただろう。
キスもまだしていない木崎と私。結婚は相手の人柄や経済力だけではなく、体の相性も重要だということはわかっている。
離婚原因のひとつに、性の不一致という言葉があるくらいだから……。
私には、その自信はなかった。
過去のトラウマが男女のそうした情愛を拒んでいる……。
木崎に嫌われてしまうかもしれない。それ以前に、まだ恋もしていない相手と、そんな関係になっても本当にいいのだろうかと、不安が過る。
木崎がカウンターにいる一分一秒が、とても長く感じられた。
日向が早く立ち去ってくれたら……。
そう思っていた矢先、日向に腕を掴まれた。