獅子に戯れる兎のように
【3】過去のトラウマに怯える兎
【柚葉side】
結局、私は日向陽の家庭教師を初日でギブアップした。
家庭教師派遣会社にその旨を伝えに行くと、執拗に理由を問われ、彼に乱暴されたとは言えなくて、逆に叱られた。
「初日にこちらから断るなんて、あなた本当にやる気あるの?男子は嫌、女子しか引き受けたくないなんて、そんなに都合よくあるわけないでしょう。あなたのような学生の無責任な行動が、こちらの信用もなくすのよ。もういいわ、他の人に頼むから」
「申し訳ありません」
当然次の学生を紹介してもらえるはずもなく、家庭教師以外の仕事を探すために、近隣のコンビニに立ち寄る。
何をしても上手くいかないのは、私がダメだから……。
コンビニで無料の求人雑誌を数冊掴み、店内で有料の求人雑誌の立ち読みをしていると、背後から声を掛けられた。
「雨宮さん?雨宮柚葉さんだよね?」
振り向くと、そこに立っていたのは二度と逢いたくないと思っていた霧原小暮《きりはらこぐれ》だった。
三年の歳月を経て、さらに大人の男性へと変貌を遂げた彼は、私を見つめ懐かしそうに目を細めた。その眼差しは、私が恋をしていた頃の優しい目をしていた。
私は彼を直視出来ず、視線を逸らす。
鼓動がトクトクと音を速める。
「やっぱり雨宮さんだよね?綺麗になったから見違えたよ。大学はこの近くなの?俺、先月からこの店に異動になったんだ」
物腰は柔らかく、声は甘く優しい。
緊張から求人雑誌を持つ手が震え、額に汗が滲む。
結局、私は日向陽の家庭教師を初日でギブアップした。
家庭教師派遣会社にその旨を伝えに行くと、執拗に理由を問われ、彼に乱暴されたとは言えなくて、逆に叱られた。
「初日にこちらから断るなんて、あなた本当にやる気あるの?男子は嫌、女子しか引き受けたくないなんて、そんなに都合よくあるわけないでしょう。あなたのような学生の無責任な行動が、こちらの信用もなくすのよ。もういいわ、他の人に頼むから」
「申し訳ありません」
当然次の学生を紹介してもらえるはずもなく、家庭教師以外の仕事を探すために、近隣のコンビニに立ち寄る。
何をしても上手くいかないのは、私がダメだから……。
コンビニで無料の求人雑誌を数冊掴み、店内で有料の求人雑誌の立ち読みをしていると、背後から声を掛けられた。
「雨宮さん?雨宮柚葉さんだよね?」
振り向くと、そこに立っていたのは二度と逢いたくないと思っていた霧原小暮《きりはらこぐれ》だった。
三年の歳月を経て、さらに大人の男性へと変貌を遂げた彼は、私を見つめ懐かしそうに目を細めた。その眼差しは、私が恋をしていた頃の優しい目をしていた。
私は彼を直視出来ず、視線を逸らす。
鼓動がトクトクと音を速める。
「やっぱり雨宮さんだよね?綺麗になったから見違えたよ。大学はこの近くなの?俺、先月からこの店に異動になったんだ」
物腰は柔らかく、声は甘く優しい。
緊張から求人雑誌を持つ手が震え、額に汗が滲む。