獅子に戯れる兎のように
 ダイニングルームに行くと、テーブルにはちらし寿司やお刺身、から揚げや天婦羅、お吸い物が並んでいる。

 娘が実家に戻っただけで、こんなに張り切らなくてもいいのに。

「ほら、柚葉も花織も手伝ってちょうだい」

「はーい」

 花織はお調子よく返事をし、キッチンで母の手伝いを始めた。

 私も食器棚から、小皿やグラスを取り出す。

「お父さん、ビール飲むでしょう」

「そうだな。柚葉も一緒にどうだ」

「そうね。飲もうかな」

「私も飲む」

 すかさず花織が口を挟む。

「お前はまだ未成年だろう。ジュースにしなさい」

「つまんないな。家だから少しくらいいいじゃない」

 花織はぶつぶつ文句を言いながら、冷蔵庫からオレンジジュースを取り出した。

 家族四人でテーブルを囲む。

 母の手料理を食べながら、私や花織が子供の頃の話で盛り上がる。

「娘が二人揃うと本当に賑やかね。柚葉、少し花織に説教してちょうだい。彼氏が出来た途端、夜遊びばかりして、大学の勉強もそっちのけなんだから」

 花織がチラッと私を見た。
『姉妹協定結んだよね?』と言わんばかりの顔だ。

「受験が終わって解放されてるのよ。まだ就活時期でもないし、少しくらい多目に見てやれば?大学に入ると色々と付き合いも増えるし、全部彼とのデートとは限らないでしょう」

 花織がニヤッと笑った。

 別に全面協力しているわけじゃない。一般論を言ってるだけだ。
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