獅子に戯れる兎のように
 留空と望月をみんなで見送り、男性陣は主役抜きで二次会に行く話をしていた。

「雨宮さんたちもご一緒にいかがですか?」

 すかさず隣にいた陽乃が口を挟む。

「いいですね。柚葉も美空も飲み足りないでしょう。勿論行くよね」

「ごめんなさい。私はここで失礼します」

 男性には興味のない美空が即答した。

「残念だな、高原さんともっとお話ししたかったのに」

 男性の一人が、美空に興味を示した。外見は冴えないが、職業は勿論医師だ。

 美空は一瞬チラッと彼を見上げ、「今夜は失礼します」と、素っ気なく答えた。

「柚葉は行くでしょう。幹事なんだから。それとも、このあと用事があるのかな?」

 意味深な陽乃の言葉に、木崎が私を見つめる。

「ごめんなさい。私も今夜はここで失礼します。木崎さん、今夜は幹事を引き受けて下さりありがとうございました」

「いえ、こちらこそありがとうございました。雨宮さん、高原さん、お気をつけてお帰り下さいね」

「はい。失礼します」

「柚葉、美空、また明日ね」

 陽乃は男性に囲まれ、紅一点となりヒラヒラと手を振った。

 余裕綽々だな。
 華やかで美しい。女性から見ても、陽乃は魅惑的だ。

 私と美空は、みんなとマリエージュの前で別れ、駅に向かった。

「美空、権田《ごんだ》さんに気に入られたみたいね」

「柚葉やめてよ。陽乃みたいな言い方しないで。権田さんは南原総合病院の外科医で四十歳。一回り以上も年上だし、外見もイマイチ、動物に例えると熊が眼鏡かけてるみたいだし、望月さんや木崎さんみたいなイケメンとは違うわ」

「意外だな。美空、いつの間にそんな情報を?権田さんに聞いたの?」

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