獅子に戯れる兎のように
「……手を離して下さい」
防犯カメラの死角。
小暮は店員の目を避けるように、店内の隅に私を連れて行く。
「柚葉、もしかして《《あのこと》》気にしてるのか?」
あのこと……。
「本当に悪かったよ。未成年の柚葉に酷いことを言ってしまったと、深く反省してる。あの日、俺もどうかしていたんだ。柚葉が初めてだと知って動揺したんだ」
小暮はゴツゴツとした指で、私の頬を撫でた。
「柚葉を傷付けたなら謝る。俺達、もう一度大人同士の付き合いが出来ないかな。柚葉も大人になったことだし、いいだろ」
結婚しているくせに、小暮は平然と私を誘う。
「……ばかなこと言わないで」
「もうすぐバイトが来る。せっかく再会したんだ。一緒にお茶しない?アルバイトの相談にも乗るよ」
小暮は棚に隠れるように私の手を握った。薬指のリングが、私の指に触れる。
「……離して」
小暮は私の耳元で囁き続ける。
「駅前のロマンテイで待っててくれ。あとで必ず行くから」
「奥さんがいるくせに、ふざけないで」
「妻がいても関係ないよ。俺は柚葉とまた昔のように付き合いたいだけだ。来ないと例の写真SNSで公開するよ」
「……写真」
「もう忘れたのか?ベッドの上で撮った柚葉の写真だよ」
あの苦い初体験を忘れるはずはない。
私は小暮が好きだった。
でも、あまりにも未熟過ぎた。
小暮の一言に……
私は深く傷付き、男性不信になった。
――ベッドの上で……
小暮が携帯電話で撮影した写真……。
布団に入ってはいたが、行為のあとに撮影されたものだ。
あの写真を……
まだ保存しているなんて……。
防犯カメラの死角。
小暮は店員の目を避けるように、店内の隅に私を連れて行く。
「柚葉、もしかして《《あのこと》》気にしてるのか?」
あのこと……。
「本当に悪かったよ。未成年の柚葉に酷いことを言ってしまったと、深く反省してる。あの日、俺もどうかしていたんだ。柚葉が初めてだと知って動揺したんだ」
小暮はゴツゴツとした指で、私の頬を撫でた。
「柚葉を傷付けたなら謝る。俺達、もう一度大人同士の付き合いが出来ないかな。柚葉も大人になったことだし、いいだろ」
結婚しているくせに、小暮は平然と私を誘う。
「……ばかなこと言わないで」
「もうすぐバイトが来る。せっかく再会したんだ。一緒にお茶しない?アルバイトの相談にも乗るよ」
小暮は棚に隠れるように私の手を握った。薬指のリングが、私の指に触れる。
「……離して」
小暮は私の耳元で囁き続ける。
「駅前のロマンテイで待っててくれ。あとで必ず行くから」
「奥さんがいるくせに、ふざけないで」
「妻がいても関係ないよ。俺は柚葉とまた昔のように付き合いたいだけだ。来ないと例の写真SNSで公開するよ」
「……写真」
「もう忘れたのか?ベッドの上で撮った柚葉の写真だよ」
あの苦い初体験を忘れるはずはない。
私は小暮が好きだった。
でも、あまりにも未熟過ぎた。
小暮の一言に……
私は深く傷付き、男性不信になった。
――ベッドの上で……
小暮が携帯電話で撮影した写真……。
布団に入ってはいたが、行為のあとに撮影されたものだ。
あの写真を……
まだ保存しているなんて……。