獅子に戯れる兎のように
 手に持っていた引き出物の入っている紙袋が、ストンと床に落ちた。

 日向は両手で私の体を包み込みキスを落とした。

 ドレスの上に着ていたロングコートは、日向の手により、意図も簡単に脱がされ、ソファーの上に。

 日向は私を軽々と抱き上げ、ベッドに向かう。

「……日向さん、待って」

「待てない。披露宴の間、ずっと俺以外の男を見てただろう」

「……えっ?」

「俺が隣に座っていたのに、俺以外の男のこと考えてた」

「そんなことない。私は山川さんを見てたのよ」

「俺はずっと雨宮さんを見ていた。だからわかるんだ」

「……日向さん」

「他の男のことなんて考えるな」

 少し乱暴な口調。
 高校生の頃の日向を思い出し、クスリと笑う。

「年下のくせに。相変わらず生意気ね」

 私の言葉に、日向がニヤリと口角を引き上げた。

「職場では先輩だけど、私生活ではそんなこと、関係ない」

「……日向さん」

「俺、結構独占欲強いから、覚悟しといて」

 日向の強引な口調は、私の中に潜む雑念を全て吹き飛ばす。

 恋に臆病な私が、男性との情事に溺れるなんて、自分では到底想像も出来なくて。

 それでも……
 日向に抱かれたいと思うのは、なぜだろう。

 日向は私をベッドに沈め、スーツの上着を脱ぎ捨てた。右手でネクタイを緩め、一気に引き抜く。

 フォーマルドレスのファスナーを下ろし、スルスルとドレスを脱がした。

 熱い息とともに、情熱的なキスが唇に降り注ぐ。

 唇の隙間から滑り込んだ舌が、保っていた理性を壊した。

 体が火を点されたように熱くなり、自分で自分がコントロール出来なくなる。
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