獅子に戯れる兎のように
 ――『お前、人形みたいだな。全然つまんねぇよ』
 初体験で小暮にそう言われ、傷付き泣いた夜。

 その言葉がトラウマとなり、もう二度と男性に抱かれることはないと思っていた。

 その私が……
 日向に抱かれ、甘い吐息を漏らす。

 指と指を強く絡ませ、日向は激しく体を揺らした。自然とこぼれ落ちる甘い声を、日向は唇で塞ぐ。

 私の耳元で、日向は「心で感じて……」と囁いた。

 羞恥心から体は火照り、僅かに保っていた理性がとろけ甘い吐息と共に上り詰める。

 日向は私を抱き締め、優しい笑みを浮かべ、私の上で果てた。

 汗ばむ体に抱き締められ、心も体も満たされている。

 トクトクと脈打つ鼓動。
 互いの鼓動が、幸せの音を奏でる。

「俺は派手婚は苦手だから、地味婚でいい?」

「結婚なんて……望んでないから」

「俺が他の女性と結婚してもいいの?」

「……それは」

 意地悪だな。
 情事のあとに、そんなこと聞くなんて。

 体がNOと答えてる。

「日向さんは、本当に私でいいの?私……年上だし、今の仕事、結婚しても続けたいの」

「年齢なんて関係ないよ。気にしてるのは、雨宮さんだけ。仕事を続けてもいいよ。働く女性は素敵だから。ここで正式にプロポーズしてもいい?」

「ま、待って……。まだ私達……付き合って日も浅いし」

「付き合ってすぐにこんなことを言うのはおかしいのかな。でも俺は、高校生の時から雨宮さんに恋してたんだ」

 日向の言葉に、急に恥ずかしくなり思わず背中を向けた。

 日向は背後から、私を抱き締めた。

「背中向けたままでいい。聞いて欲しいんだ。俺はいずれ花菜菱デパートを退職するつもりなんだ」

「……えっ!?」

「今は花菜菱デパートで知識を学びながら、開店資金を貯めている」

「開店資金……?」
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