獅子に戯れる兎のように
 母が笑いながら、二人を仲裁する。それは花織が要領が良かっただけで、彼氏が出来た途端、甘える対象が親から彼氏に変わっただけ。

 男は女を変えてしまう。
 私も傍目には変化したように見えるのかな。

 確かに、両親や妹と同席しているテーブルの下で、日向と手を繋ぐなんて、今までの私なら考えられない。

「日向さんも早く結婚したいなら、子供作っちゃえば?煮え切らないお姉ちゃんも、子供が出来れば踏ん切りがつくんじゃない?」

「ばかもん!」

 父の怒りが再び爆発し、思わず繋いでいた手を離そうとしたけど、日向はその手が離れないように、強く握り締めた。

 両親の視線が気になり、トクトクと鼓動が速まる。顔から火が吹き出しそうなくらい上気し、笑うしかない。

「柚葉?どうかしたの?さっきからそわそわして変だよ」

 母にたしなめられ、思わず繋いでいた手を離した。

「御馳走様でした」

 花織はスクッと立ち上がり、携帯電話に視線を落とす。

「私、ちょっと出掛けてくるね」

「花織、こんな時間から外出するのはよしなさい」

 私の忠告をよそに、花織はプイッと背を向けた。

「花織、今から外出するのは許さんぞ」

「お父さんもお母さんも、あまり束縛するなら、私も一人暮らしするからね」

「一人暮らしする金もないくせに、一人前の口を聞くな。家を出るなら一切援助しないからな」

 親子喧嘩はどんどんヒートアップし、もはや手がつけれない。

「お父さんも花織も、日向さんの前でいい加減にして」
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