獅子に戯れる兎のように
総務部に入室すると山川は虹原に視線を向け、ニッコリと微笑んだ。
虹原もまた、山川に笑みを向ける。
僅か一日で、虹原と山川の間に甘い雰囲気が漂う。
こんなにも心苦しいのは……
なぜだろう。
胸をえぐられたように……
心が痛む。
「おはようございます」
部長や課長、社員に朝の挨拶をしデスクに座る。心を落ち着かせパソコンを開き、気持ちを切り替え仕事を開始した。
「雨宮さん、ちょっと」
「はい」
部長に呼ばれデスクに行くと、部長は朗らかに笑った。気難しい部長が部下に笑顔を見せる時は、特別な要件がある時だ。
「雨宮さんは虹原君と同期だよね。部の歓送迎会をしたいんだがセッティングしてくれないか」
「歓送迎会ですか?」
「急で悪いが、土曜日にセッティングしてくれ」
「歓送迎会ということは、どなたか総務部に配属されるんですか?」
「そーそー、通達見なかったのか?若い社員が配属されるんだ。庶務関連の手続きも含め宜しくね」
「はい。わかりました」
いつもこんな役回りは私になる。勤続年数が長く、女性というだけで歓送迎会のセッティングも任される。短時間で全員が満足する店を予約することは、簡単なようで難しい。
それも正直、もう慣れっこだけど。
「それと、新しく配属する社員も引き継ぎのためにこちらに顔を出すから、宜しくな」
「はい」
新しい社員か、歓送迎会の幹事にされてしまったからには、挨拶くらいしないといけないのかな。
正直、土曜日に歓送迎会だなんて、ただでさえ週末は仕事が忙しいのに勘弁して欲しい。
人事異動に関わる名刺やゴム印、名札等の手配は庶務課の仕事。各課から注文書が届いているはず。至急手配しないといけないな。
デスクに戻り、各課から届いた注文書の伝票をチェックし処理する。
一時間後、再び部長に呼ばれた。
「雨宮さん、ちょっといいか?会議室にお茶を頼む」
「はい」
すかさず、隣席の山川が私に耳打ちをした。
「新しい人、さっき来たみたいですよ」
虹原もまた、山川に笑みを向ける。
僅か一日で、虹原と山川の間に甘い雰囲気が漂う。
こんなにも心苦しいのは……
なぜだろう。
胸をえぐられたように……
心が痛む。
「おはようございます」
部長や課長、社員に朝の挨拶をしデスクに座る。心を落ち着かせパソコンを開き、気持ちを切り替え仕事を開始した。
「雨宮さん、ちょっと」
「はい」
部長に呼ばれデスクに行くと、部長は朗らかに笑った。気難しい部長が部下に笑顔を見せる時は、特別な要件がある時だ。
「雨宮さんは虹原君と同期だよね。部の歓送迎会をしたいんだがセッティングしてくれないか」
「歓送迎会ですか?」
「急で悪いが、土曜日にセッティングしてくれ」
「歓送迎会ということは、どなたか総務部に配属されるんですか?」
「そーそー、通達見なかったのか?若い社員が配属されるんだ。庶務関連の手続きも含め宜しくね」
「はい。わかりました」
いつもこんな役回りは私になる。勤続年数が長く、女性というだけで歓送迎会のセッティングも任される。短時間で全員が満足する店を予約することは、簡単なようで難しい。
それも正直、もう慣れっこだけど。
「それと、新しく配属する社員も引き継ぎのためにこちらに顔を出すから、宜しくな」
「はい」
新しい社員か、歓送迎会の幹事にされてしまったからには、挨拶くらいしないといけないのかな。
正直、土曜日に歓送迎会だなんて、ただでさえ週末は仕事が忙しいのに勘弁して欲しい。
人事異動に関わる名刺やゴム印、名札等の手配は庶務課の仕事。各課から注文書が届いているはず。至急手配しないといけないな。
デスクに戻り、各課から届いた注文書の伝票をチェックし処理する。
一時間後、再び部長に呼ばれた。
「雨宮さん、ちょっといいか?会議室にお茶を頼む」
「はい」
すかさず、隣席の山川が私に耳打ちをした。
「新しい人、さっき来たみたいですよ」