獅子に戯れる兎のように
「パーティー会場があるんだ。やだ、陽乃何か企んでるかも」

「今さら気付くなんて遅いよ。私達ジーンズだよ。マリオリッチには行けないよ。陽乃にLINEして断って」

「そうだね。婚活パーティーだったら、最悪だもんね」

 美空はバッグから携帯電話を取り出し、陽乃に早速LINEする。

 陽乃からは直ぐに返信が来た。

【今さらキャンセルしないで。会費制の婚活パーティーじゃないから。知人のバースデーパーティーに招待されたの。ジーンズでもOKだから、必ず来てね。】

 美空は溜め息を吐きながら、私にLINEを見せた。

「どうする柚葉?バースデーパーティーだって。知らない人のバースデーパーティーって、なに」

「しょうがないな。ジーンズでもいいなら、ちょっとだけ顔出して退散しよう」

「陽乃の策略にまんまとはまったって感じ。ていうか、柚葉がOKするなんて、雨が降るかも」

 美空はカフェの窓から、青空を見上げ笑った。

「美空がちゃんと確かめないからだよ」

 日向があの高校生だったと知り動揺している。

 今夜はうんと夜遊びし寮には出来るだけ遅く帰ると決めた。

 だから陽乃の誘いは、正直有り難かった。婚活パーティーでも合コンでもこの際構わない。

 今夜は二次会も三次会も付き合う。寮で日向と顔を合わせないために。

 私が《《あの時の》》家庭教師だったということは、決して思い出させてはいけない秘密だ。

 ◇

 約束の時間まで、美空とショッピングをして楽しむ。勤務するデパートではない商業施設での買い物は、勉強にもなるし気分転換にもなる。

 たくさんの紙袋を抱え、ホテルに向かう。仕事柄、時間には厳しい陽乃。ほんの数分の遅刻だが、きっとイライラしているに違いない。

 ―午後七時過ぎ、キングパーフェクトホテル―

 陽乃はホテルのロビーでソファーに腰を降ろし、私達を待っていた。

 口元には笑みを浮かべているが、明らかに目は怒っている。
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