獅子に戯れる兎のように
「南原総合病院の御曹司ですか……。大病院の次期後継者、花嫁候補なんて捨てるほどいるはず。花菜菱デパートの社員なんて目じゃないでしょう」

 美空は本人を目の前に暴言を吐く。

「御曹司か……。確かに一番有力な後継者候補だけど、親の決めた花嫁候補と政略結婚はしたくない。私は恋愛結婚希望なんです」

 なんて、嘘ばっかり。
 恋愛結婚と吹聴し欲に目のくらんだ女性と遊ぶだけ遊んで、親の決めたセレブな令嬢と結婚するに決まっている。

「美空、南原さんに失礼よ。ごめんなさいね、無作法で。本日はお誕生日おめでとうございます。こちらは、高原美空、雨宮柚葉、本平留空です。私の同期なの」

「そう。よく来てくれましたね。今日はフレンドリーなパーティー、堅苦しい病院関係者より、私の友人を多く招いています。
 美味しいシャンパンや料理も沢山用意しています。楽しんで帰って下さいね」

 南原は陽乃に視線を向け、陽乃をエスコートする。

 男性陣の視線は、陽乃にくぎ付けとなる。

 陽乃が南原の恋愛結婚の対象となっているのか、それは私には予測不可能だ。

 南原が狼なら、陽乃は女狐。男性の好みの女性に化け、手のひらの上で転がし、自由自在に操ることが出来るくらい、したたかな女性だから。

「サンドイッチ食べなきゃ良かったな。お腹減らないよ」

 美空はぶつぶつ言いながら、バイキング料理に手を伸ばす。フレンチ、イタリアン、女性の好む料理がずらりと並んでいる。

「さすが御曹司だね。友達呼んでこのゴージャスさ。太っ腹。陽乃、大病院の御曹司を狙ってんのかな?」

「当然そうでしょう」

 私もお皿片手に、デザートのフルーツやスイーツを入れる。

「もうデザート?柚葉、食べなきゃ損だよ。ほら、フォアグラやキャビアもあるよ」
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