獅子に戯れる兎のように
「陽乃さんの友人は美しい方ばかり。花菜菱デパートは華やかで羨ましいな」

「あら木崎さんだって、白衣の天使に囲まれてお仕事されているのでは?」

「私のクリニックはベテランのナースばかりでね。天使とは呼べないかな。これは失敬、女性に対して失言でした」

 木崎は笑いながら、私に視線を向けた。

「すみません木崎さん、花柳さんとお話させてもらっていいですか?」

 陽乃はすぐに男性数人に囲まれ、私達に手を振った。

「陽乃ったら、南原さんと付き合っているのにいいのかな」

「南原と陽乃さんが?南原からは友人の一人だと聞いていますよ。陽乃さんもそのつもりでは?」

「そうなんですか?親しそうだったから、てっきり……」

「南原には恋人と呼べる女性はいないみたいですよ。みんな友達。大人になると友達にも色々ありますけどね」

 意味深な言葉に、南原と陽乃はセフレではないかと勝手に解釈した。

「木崎ちょっといいかな?」

 南原に呼ばれ、木崎は「それではまた」と爽やかな笑顔で立ち去る。

 南原は美しい女性と一緒だった。気品もあり立振舞いも優雅で、一目でセレブな家のお嬢様だとわかる。

 その女性は木崎さんを見つめ微笑んだ。どうやら木崎さんに好意を抱いているようだ。

 なんだかんだ言っても、やはりセレブな紳士にはセレブな女性がお似合いだ。

 ここは庶民の来る場所ではない、私達は単なる人数集めに過ぎない。気にいれば喜んでセフレになるとでも思っているのかな。

 女性蔑視もいいところだ。

「あー疲れた。何で私が留空の世話係なのよ」

 溜め息を吐きながら、美空が戻って来た。
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