獅子に戯れる兎のように
 何が衝撃的なの。
 笑い過ぎだよ。

 お腹はいっぱいなのに、サービス品の増量ギョーザをパクつく私。

 今日1日で、きっと体重も増加だな。

 ――新宿駅で美空と留空と別れた私は、独身寮のある汐留に向かう。

 時刻はすでに夜十一時を回っていた。空いた座席に座り、ついウトウトしかけた時、誰かが隣に座った。

 目を開けることも億劫で、電車の揺れに身を任す。

 自分では意識はしっかりしているつもりだったが、コツンと何かが頭にあたりハッと我に返る。

 思わずここが何処なのか、駅のホームに視線を向けた。

「まだ汐留ではありませんよ」

「……えっ!?」

 隣に視線を向けると、そこには日向が座っていた。

「……日向君。いつの間に」

「新宿駅で乗り込み偶然雨宮さんを拝見したので隣に座りました。よほど疲れていたのか、コクリコクリとされていて、とても危ないご様子だったので、雨宮さんの枕になりました」

「……っ、ごめんなさい。そんなにフラフラしてた?恥ずかしいな」

「俺が隣で良かったですよ。下心ある人だったら、何をされていたか。電車内でも引ったくりや窃盗はあります。目立つ場所に財布を入れてると危険ですよ」

 開いたバッグから財布がのぞき、慌ててファスナーを閉めた。

「忠告ありがとう。それと……肩を貸してくれて、ありがとう……」

「いえ、会社の先輩ですから、何だってします。今日はあれからどちらへ?」

 日向は少しお酒の匂いがしたが、アルコールには強いのか顔色は変わらず、私よりも口調はしっかりしている。
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