小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 そして今の世になって、ハルティーリアでは貿易を強化するために、リトルウィックとの間に交易路を作りたいと考えるようになった。

辺境部族を吸収していくうちに、縦に長く広がったリトルウィックの領土は、ハルティーリアが他国と貿易するのに、非常に邪魔な位置にあったからだ。

 レオの伯父であるダンカンが、リトルウィックの姫を娶ることになったのは、そういう経緯である。

 しかし、忘れっぽいハルティーリアの国民とは違い、リトルウィックの巫女姫は、復讐をあきらめてはいなかった。歴史書に語り継ぎ、いつか必ずハルティーリアを滅ぼせと代々の巫女姫に言い次いで来たのだという。
 ダンカンの妻となったジェナは、その言い伝えを幼い頃より聞かされた姫だ。

 手始めに、彼女はやがて国を継ぐ夫を、自らの術で洗脳していったのだそうだ。

 けれど、次の王に選ばれたのは、ダンカンの弟だった。ジェナは怒り、レオを攫わせた。そして、彼の腕に恐ろしい呪文の刻印を残したのだ。

「……レオ様の腕に刻まれたのは古代語の呪術で、血を媒体として、呪文を刻み続けていくものなの。血管をなぞるように赤黒い呪文の線を体に刻んでいき、長い年月をかけ、最終的に心臓の上に魔法陣を描き出すのよ。胸に魔法陣が描き終えると、その心臓の血を吸収して発動するの」

「心臓の血が全部なくなったら、悪魔に殺されるより先に死んじゃうじゃない?」

「そうかもしれない。実際、小説では発動してないから分からないわ」


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