小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 翌日、ローレンに渡された台本を見て、私はげんなりした。あまりにも、古典的ないやがらせの応酬に、あきれる。これを演技でやる虚しさと言ったら半端ない。

「なにこれ、『図々しいのよ、赤毛のくせに』ってあるけど、赤毛の人間が図々しいなんて迷信、聞いたことないけど」

「うるさいなぁ。いいのよ。このまま言って」

「ええと。ローレンが歩いているところで足をかければいいんだよね? でもレオが見ているときに? タイミングが難しいなぁ」

「大丈夫。レオ様の講義内容はばっちり頭に入っているから。次の休憩時間は移動教室なんだよ」

「へぇ」

 それはすごいな。まるでストーカーみたい。
 若干引いてしまうけれど、そのくらいローレンはレオが好きなのかと思えば感心はする。……するんだけど、なーんか、ちょっとおもしろくないんだよなぁ。

 そして休憩時間になるとすぐに、私達は渡り廊下が見える中庭に移動する。

「いい? リンネはそこで本を読んでいて。私が、レオ様が見えるタイミングで横切るから。レオ様に憧れて私が駆け寄ろうとするところを、あなたが足蹴にして、そしてさっきのセリフ。おっけ?」

「はいはい、オッケー」

 面倒くさいけれど、これがレオを救うならば仕方がない。
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