小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 驚いたことに、本当に講義棟の方からレオがやってくる。

 復学してそれなりに時間が経過したというのに、なぜまだひとりで歩いているのか。友人を作れって、あんなに口を酸っぱくして言っているのに、レオのバカ。

 私は、今やらなきゃならないことよりも他のことに意識がいってしまう。

 やがて、なぜか鼻唄を大声で歌いながら飛ぶようなステップで反対側からローレンが登場する。

「ふんふーん、ふん」

 めっちゃ目立つな。まあいいのか。レオに見つけてもらわなきゃいけないんだもんね。
 言われたとおり、足をかける。「ああっ」と大きな悲鳴を上げてローレンがよろけた。
 レオの視線がこちらを向く。ああ、気づかれたかな……と思った次の瞬間、レオが駆け寄ってくた。

 地面に転がるローレン。私は彼女を見下したように言わなければならない。

「図々しいのよ、この……」

「リンネ、転んだのか?」

 駆け寄ってきたレオは、転がっているローレンではなく、なぜか私の手を取った。

「え……レオ。ちがう」

 地面にうずくまっているから見えないと思ったのか。ローレンは「ああん、痛ぁい」と甘えるような声を出す。

 私は視線でレオに訴えた。ほら、レオ。女の子が倒れているんだよ? 大丈夫かって助けてあげなよ。
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