小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
「レオ、ローレンが嫌いなの?」

 ぐいぐい腕を引っ張られて、痛いくらいだ。レオは不満そうにずっと前を向いているので声をかけるのさえ気まずかったが、中庭の中心を超えたところで聞いてみた。

「何がだ?」

「さっき倒れていたの、ローレンだよ。一緒のタイミングで転入してきたんだから、覚えているでしょう?」

「あの子爵令嬢か? 興味はない。おまえこそ何を考えている。俺があの令嬢に触れるわけがないだろう?」

 そうだった。レオは女の子には触れないんだった。彼女を救護室に連れていく前に、レオが救護室に運ばれるほど体調を崩すところだったわ。
 でも、ローレンがレオの運命の人なら、触れるようになるんじゃないのかなぁ。

「触ってみたら平気になるかもよ」

「ならない。俺が今までどんな女でも駄目だったの、おまえが一番よく知ってるだろう」

「そうだけど」

 でもローレンは特別だから。そう思うけど、彼女が例の預言者だとバレないためには、そんな説明をしてはならない。
 仕方なく、あたりさわりのない感じで促してみる。

「レオは王子様なんだから、少しずつでも慣らしていかないといけないと思うんだよ。ローレン様はいい子だし、一緒に転入したって縁もあるし、少しずつ仲良くなっていけばいいと思うんだけど」

「……妙にローレン嬢を推薦してくるな」

 疑いのまなざしを向けられて、私は言葉が出なくなってしまった。

 ああ、やっぱりこういうの向いてないな。私に走る以外の能などないのだ。

< 114 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop