小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 レオは黙ってしまった私を見て、深いため息を着くと、私の頭を優しく撫でた。

「似合わない顔するな。そもそもな、この呪いがある限り、俺が王位を継ぐことはないと思う。そうなればおそらく傍系からクロード辺りが選ばれるだろ。あいつなら、社交的だし、能力的にも申し分ない。ならば俺はこのままでもいいじゃないか」

「駄目に決まってるでしょう? 呪いは解くの。絶対に。だからレオはちゃんと国を継ぐ覚悟を持たなきゃ駄目なんだから!」

「……そう言われてもなぁ」

 やる気のない声に、睨むくらいの元気は湧いてきた。

 呪いをあっさり受け入れられては困る。ていうか、こっちがこんなに躍起になっているというのに、なんでレオが落ち着いているのだ。どうしようもなくイラつく。

「レオだって死にたくないでしょう? こんな呪いなんかに負けるの嫌でしょう?」

「まあ、悔しくないと言えば嘘になるが、……これでも今の状況にはそれなりに満足しているんだ。もし死んだとしても後悔しないくらいにはな」

 遠い目をして、達観した老人みたいなことを言う。

 おのれ、無欲! 人間嫌いのままで人生に満足しないで欲しい。世の中には、もっといいことがあるんだからね。おいしいものもいっぱいあるし、恋だって人生を豊かにするよ。
 なにより、恋人ができれば、もっと生きることに執着するはずだ。

 やっぱり私、頑張らなきゃ。レオを死なせないために、なんとしてでもふたりを恋に落とさなきゃ!

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