小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 そこで私は、午後に勉強を見てくれないか頼んでみることにした。正直、了承してもらえるかは半々かな……というところだが、何事もやって見なければ一歩も進まない。

「ねぇレオ。友達も連れて勉強会しない?」

「友達? そんなのいたのか、リンネ」

 失敬な。たしかに今のところ、ローレン以外の友達はいないけれども。

「ほら、ローレン様。最近ちょっと仲いいんだよ」

「またあの子爵令嬢か。たしかに、ふたりでいるのはよく見るな」

「そう。それでね! ローレン様も転入生でしょう? ついていくのが大変だから、教えて欲しいって言われたの。私、やってあげようと思うんだけど、レオも一緒にいたら楽しいかなって思って」

 ローレンと考えたシナリオ通りに告げる。理由はわからないけど、レオの傍に行って見上げるように頼めと言われたので、それも実行済みだ。
 レオは一瞬後ずさりしたものの、気を取り直したように咳ばらいをし、神妙な顔をした。

「……そ、そうか」

「駄目かなぁ。身元はちゃんとしてると思うんだけど。レットラップ子爵も、王都で商会を開いているそうだし。珍しいお菓子とかもらえるかもしれないし」

「また食い気か……。分かった。だが、俺が誰かの屋敷に行くとなると警備が大変だからな。ふたりとも城にくるか?」

「許可でる?」

「おそらく」

「本当? ありがとう」

 満面の笑顔で応じれば、レオはちょっとたじろいだように身を引いた。
 なんだかよくわからないけれど、ローレンの言うとおりにしたら、ちゃんとうまくいった。すごいな、ローレン。さすがヒロイン。

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