小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 そのまま、レオは立ち去ってしまう。彼のいた場所をじっと見つめながら私は途方に暮れていた。

「どうしよう」

 なんだか、とんでもない失敗をしてしまったような気もする。だけど、レオを救うのはローレンだと決まっている以上、私はレオの傍にいちゃいけない。ローレンに託すしかないのだ。
 胸がじくじくと痛んでも、今すぐ駆け出してレオを引き留めたくても、それをしたらレオのためにならない。

 口の中に血の味が広がった。いつの間にか唇をきつく噛んでいたらしい。
 なんだかとても泣きたくなったけれど、泣いてはいけないような気がして、痛みを感じながらも唇をかむのを止められなかった。

 屋敷に戻ってからローレンに手紙を書いた。レオと婚約破棄したことと、どうかレオを救ってほしいということ。

 それを従僕に託して、レットラップ子爵の商会まで届けてもらう。

「あー、明日学校いきたくないなぁ」

 私は伸びをして、窓の外を見る。いつもだったら気持ちいいと思うのに、綺麗な青空や澄んだ空気が憎らしい。大雨でも降ってくれれば、少しは私の気が晴れるかもしれないのになんて八つ当たりめいたことを思った。

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