小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
レオと私が婚約破棄したのではないかという噂が、学園中で飛び交っていた。
もしかしたら、話しているのを見た生徒がいたのかもしれない。まだ陛下や王妃様にきちんと報告したわけでもないので噂を広げられると困るのだが、人の口に戸は立てられない。
同級生はみな、私と視線を合わせないようにしつつひそひそと噂話に花を咲かせている。
おそらく私が振られたという話になっているのだろうから、かける言葉も見つからないとでも思われるいるのだろう。
本当は私の方から言い出した話なのに……と思えば笑いたくなる。乾いた笑いを出そうとして、喉が詰まった。
……変だな。泣きたい。
胸が苦しい。どうしてだろう。レオを傷つけてしまったから?
それもあるけど、もう私がレオの隣に立つことが無いのかと思ったら、無性に寂しくなってきた。
元気でいて欲しい。生きていてほしい。だからこそ離れる決断をしたけれど。これはこれで、身を切られるように寂しい。
レオはもう、私と一緒に走ってくれない。背中を追うことも、追い越して振り向くことももうできない。
毎日のように、ふたりで城の内周を走った日々を思い出すと、どうしようもなく胸が苦しくなる。
ああ、寂しい。悲しいよ。私と一緒に走ってくれる人なんて、レオしかいないのに。