小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
* * *
その日、僕は国王夫妻に呼び出された。
十三の頃からレオの世話係を任命されている僕は、今や彼の主治医に似た立場だ。魔術的観点からレオの現状を説明するため、国王夫妻とは月に一度、定期的に話す機会を持っている。その僕が、突然呼び出されるのは意外で、一体何事かと、足早に歩いた。
「クロードです。参上いたしました」
「ああ、よく来てくれたわ、クロード」
「なにかあったのですか?」
問いかけた僕に、突然、よよよと泣き出したのは王妃様だ。
「あなたはもう聞いたかしら。レオがリンネさんと婚約破棄したいと言い出したのよ」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。考えるよりに先に反射で答える。
「嘘だ」
次の瞬間、陛下の御前であり、王妃様への返答だったことを思い出し、言葉を選ぶ。
「……あ、失礼しました。まさか。レオがそんなことを言うはずがありません」
「それが本当なの。昨晩、神妙な顔で言いに来たのです。もう私、驚いてしまって……。なにがあったのかご存知ではありませんか? クロード。あのふたり、あんなに仲が良かったのに」
何があったか聞きたいのはこちらの方だ。リンネもレオも、傍から見ていれば互いに思いあっていることなど明白なのに。
僕は叫び出したい気分をこらえて、考える。
その日、僕は国王夫妻に呼び出された。
十三の頃からレオの世話係を任命されている僕は、今や彼の主治医に似た立場だ。魔術的観点からレオの現状を説明するため、国王夫妻とは月に一度、定期的に話す機会を持っている。その僕が、突然呼び出されるのは意外で、一体何事かと、足早に歩いた。
「クロードです。参上いたしました」
「ああ、よく来てくれたわ、クロード」
「なにかあったのですか?」
問いかけた僕に、突然、よよよと泣き出したのは王妃様だ。
「あなたはもう聞いたかしら。レオがリンネさんと婚約破棄したいと言い出したのよ」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。考えるよりに先に反射で答える。
「嘘だ」
次の瞬間、陛下の御前であり、王妃様への返答だったことを思い出し、言葉を選ぶ。
「……あ、失礼しました。まさか。レオがそんなことを言うはずがありません」
「それが本当なの。昨晩、神妙な顔で言いに来たのです。もう私、驚いてしまって……。なにがあったのかご存知ではありませんか? クロード。あのふたり、あんなに仲が良かったのに」
何があったか聞きたいのはこちらの方だ。リンネもレオも、傍から見ていれば互いに思いあっていることなど明白なのに。
僕は叫び出したい気分をこらえて、考える。