小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

 屋敷に帰ってから、私は頭の中にあふれかえる情報を、改めて整理した。

 私が暮らすここはハルティーリア王国という。ディアノス大陸の東端に位置している、一千年ほどの歴史がある産業貿易国だ。国土内に大きな火山があり、地熱を利用した農業も盛んで、国は潤っている。

 そして私はリンネ・エバンズ。父親はチェイス・エバンズ。伯爵だ。
 領土は王都より南にあるが、財務官である父の仕事上、一年のほとんど王都にあるタウンハウスで過ごしている。

 リンネは八歳で、他の王都に住む貴族子女と同様に王都にある貴族学校に通っている。
 日本の学校と違い、この国の学校は五歳から十七歳まで、午前中だけ通う。午後は自分の屋敷に戻って礼儀作法の練習をしたり、武術の訓練をしたり、狩りをしたりとそれぞれの家庭事情に合わせて動くものらしい。
 クロードからの依頼は、本来は家庭で過ごす午後の時間に城に来て、レオと一緒に勉強してほしいというものだ。

 そのレオについての情報も、いろいろ思い出してきた。
 一年前、王家は代替わりの政変があった。詳しくは公にされていないが、その際にレオは多大なるショックを受ける出来事があり、引きこもりになってしまったのだそうだ。

 学園に通う期間はさまざまな貴族子女と交流が持てる王族にとっては重要な時期だ。将来の側近も見つけなくてはならない。引きこもりとして過ごすのはあまりにももったいなく、国王様は早くレオを学園に戻したいらしい。

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