小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 そういえば、呪いが発動する時期のことは考えてなかった。漠然と卒業までは大丈夫なんだろうと思っていたけれど、原作とは違う動きをしているんだもの。私が考えていたよりずっと、呪いの進行は早いのかもしれない。

「魔法陣が完成するまで、もうひと月もないと思う。だというのに、本人はむしろ、死を受け入れようしている。君と婚約したのも、最期に君の婚約者という肩書が欲しかったからだって、そう言っていたよ」

 なにそれ。婚約は女除けのためだったんじゃないの?
 クロードは苦笑して、肩をすくめる。まるで理解できない、したくないというように。

「死ぬまでは、リンネを独占させてくれ、って僕に言ったんだよ。そのあとは頼む、なんて虫のいいこともね。あきれたけれど、君とレオがうまくいくのは彼のためにいいと思っていたから僕は頷いておいた。それが先日、今度は婚約破棄したいと言い出した。さすがに怒ってしまったよ、何を考えているんだって」

 言い合うふたりの姿なんて想像がつかないけれど、クロードは指でバッテンを作る。なにかしらの言い合いはしたみたいだ。

「そうしたら、レオはリンネのためを思ってそうしたみたいなんだよねぇ」

「……え?」

「リンネは僕が好きなんだって? だからリンネを幸せにしてやってくれって言われちゃったよ。笑っていてほしいんだって、君に」

 目の奥が熱い。喉が痛くて苦しい。何を言っているんだ、レオは。笑っていてほしいって、幸せになってほしいっていうのは、こっちのセリフだって言うのに。

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