小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
魔法陣の完成
「こっちだ! リンネ。すぐに部屋に運んで」
先に伝令を頼んでいたからか、レオを連れて城に戻ったときには、治療用の部屋が用意されていた。クロードのほか、年配の男性が幾人かいる。
「彼らは僕と一緒に魔術研究をしてくれる人たち。あと……」
「お父様?」
そうつぶやいたのはローレンだ。たしかに、ローレンとよく似た赤毛の男性がいる。驚きで目を見開いて、突然現れた娘に困惑していた。
「ローレン……なぜここにいるんだい?」
「レットラップ子爵、申し訳ありませんが、先に部屋に向かいます。リンネも来て」
「う、うん」
なぜローレンの父親がいるのかと目で問えば、クロードはレオを見つめたままそっけなく話す。
「子爵は協力者だ。ずっと魔術書の入手に力を尽くしてくれていたし、事情も簡単には伝えてある」
「そうだったんだ」
クロードと子爵の間につながりがあるとは思ったいなかったので、驚いた。
でも今はそれどころじゃない。
「クロード。助けられるよね、レオ」
「助けるんだよ、リンネ。僕と君でね」
バタバタと部屋に入り、レオをベッドに横たえた。服を脱がせ、上半身を裸の状態にしてから、改めて魔法陣を確認する。
レオは、呪いに侵されているとは思えないほど、逞しい体つきをしていた。三角筋と上腕三頭筋がしっかり鍛えられているから、腕が太くたくましい。厚みのある胸には、呪いの元である二重の円の魔法陣が描かれている。隙間を埋めるように古代語が、円の中央には六芒星が途中まで描かれていた。