小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 その日の学園生活は無難に過ぎていった。
 授業が終わると、迎えに来た馬車に乗り、自分の屋敷に戻って昼食を取ってから、今度は王城へと向かう。

「これが通行証になります」

 お父様から渡されたという通行証をエリーが見せてくれる。王家の紋章が彫られた木彫りの板だ。城門を通るときに必要となるらしい。

「お嬢様が王子様のお相手として選ばれたことは、私達にとってもこの上ない喜びです」

 誇らしげに言われたけれど、遊び相手に選ばれただけだし、理由が理由だから私は誇らしくない。むしろ反省しなければならないんじゃないだろうかと思いながら、私は馬車が城門をくぐるのを見守った。

 城内に入ると、衛兵に馬車を誘導され、エリーと共に下ろされた。

「お話は伺っております。こちらでございます」

 衛兵に案内され向かった先は応接室だ。エリーは邪魔にならないようにと一歩下がったところでおとなしくしている。

「やあ、よく来てくれたね、リンネ嬢。どうぞこちらへ」

 私を笑顔で迎えてくれたのはレオ本人ではなくクロードだ。

 クロード・オールブライトは十三歳。先王――すなわちレオの祖父――の弟が臣籍降下して興したオールブライト公爵家の一員で、レオとははとこ同士になる。
 レオとは子供のころから仲が良く、引きこもりになってから、親族の中で一番年が近いという理由で、彼の世話役を引き受けているらしい。もちろん、彼自身も学業や自身の家督を継ぐための仕事があるので、べったり一緒というわけではないそうだが。

「使用人は控えの間で待っているように。リンネ嬢はこちらに。レオが待っています」

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