小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
「……なんだよ。俺はこれからどうやっておまえを振り向かせようかと必死に考えていたのに」

 うなだれるレオが、とてもかわいい。ドキドキして、照れくさくて逃げたいくらいなのに、うれしくて顔がニマニマしてしまう。ああ好きだなぁと改めて思う。
 私が頭を撫でると、恥ずかしそうに上目遣いで見られた。男の人の上目遣いって妙に色気があるなぁ。ドキッとしちゃう。

「ねぇ、レオ。私とずっと一緒に走ってくれる?」

「体が動く限りは」

「私より先に死なない?」

「それは善処するとしか言いようがない」

「私、王太子妃には向かないと思うんだけど、そこはどう思う?」

「向かないと思っているのはおまえだけじゃないのか。ローレン嬢も、おまえは自分を犠牲にしてでも他人を守る人だと言っていたぞ。王妃は、時には自分よりも国家を想わねばならないことがある。おまえにその資質がないとはとても思えないな」

 ローレンがそんなこと言ってくれたとは意外だ。なんだか気恥ずかしくなっちゃう。

「でも、私みんなに嫌われてるよ?」

「そうか? 今やおまえは俺を救った聖女だが」

 どうやら、聖女扱いになっているのはローレンだけではないらしい。

「まあ、おまえが俺を好きじゃないというならば仕方ないが」

「え? 好きだよ。それは本当」

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