小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
 反射で答えたら、レオの顔が真っ赤に染まる。
 あ……なんかしまった。また恥ずかしいことを言ってしまったかもしれない。

「だったら、他のなんの資格もいらない」

 レオの顔が近づいてくる。なんとなく目をつぶってそのときを待つと、柔らかな唇が、そっと私のそれに触れてきた。

 うわあ、キスをしている。レオと? なんか変な感じ。
 ものすごくドキドキして、気恥ずかしくて、誰もいないはずなのに周りが気になっちゃうけど、その反面、ずっと触れていたいとも思う。

 恋をするのって、こんなにたくさんの気持ちを自分の中に抱えることなんだね。
 すごく大変そうだけど、ずっと私に寄り添ってくれたレオとだったら、なんでも乗り越えられるような気がする。

「ずっと一緒に走ってやるから。ずっと俺の傍に居ろ」

 吐息交じりに彼の声が耳に届く。私はそれがうれしくて、思い切り彼に抱き着いた。

「……リンネ」

 戸惑ったような声ののち、ゆっくりとレオの手が背中に回る。
 私はようやく、自分の無事と彼の無事を実感することができて、心の底からホッとしたのだ。
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